レッドオーシャンとブルーオーシャン戦略:意味と成功事例。

Keiです。

今回は、「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン戦略」の意味(概要)と成功事例についてお伝えすると同時に、

「どうやったらブルーオーシャンを創造していく事ができるのか」

という方法論についても解説したいと思います。

「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン」の意味

レッドオーシャンとブルーオーシャンは、「市場の状況」を海に例えたビジネス用語です。

それぞれ日本語訳すると「赤い海」「青い海」になりますが、レッドオーシャンは「血で染まった赤い海」、ブルーオーシャンは「まだ血で染まっていない青い海」を意味しています。

つまり、

レッドオーシャン:血で血を洗う激しい争い繰り広げられている市場
ブルーオーシャン:争いの無い平和な市場

という事です。

「競合が多過ぎるし、もう市場が飽和してて今更参入しても稼げない」と思われている(思い込まれている)市場が「レッドオーシャン」、「まだ誰も参入していなくて稼ぎ放題の市場」が「ブルーオーシャン」とも言えます。

よって、とくに新規参入者にとっては、レッドオーシャンで既存企業と熾烈なシェア争いを繰り広げるよりも、競争の存在しないブルーオーシャンを創造する方がメリットが大きいわけです。

もちろん、ブルーオーシャンが新たに発見された場合、すぐにその市場には競合(模倣者)が参入してくる事になりますので、その市場も遠からずレッドオーシャンになってしまいます。

しかし、ブルーオーシャンを創造した企業は

・参入直後に市場のシェアを独占できる
・その市場の独占によって自社のブランドを確立できる

といった面などから、その後の市場における大きな優位性を得られる可能性があります。

レッドオーシャン戦略とブルーオーシャン戦略

「レッドオーシャン戦略」と「ブルーオーシャン戦略」はINSEAD(欧州経営大学院)教授のW・チャン・キムとレネ・モボルニュが提唱した経営戦略論で、その名称からも分かる通り、

レッドオーシャン戦略:レッドオーシャンでの競争に打ち勝つ経営戦略
ブルーオーシャン戦略:ブルーオーシャンを新たに創造する経営戦略

を意味します。

レッドオーシャン戦略が競合ひしめく既存市場において

「いかに市場の需要を利用して競合を打ち負かし、シェアを拡大させるか」

を考えて主に「差別化」と「低コスト化」のいずれかを選択していく経営戦略なのに対して、ブルーオーシャン戦略は

「いかに隠れた需要を見つけ出し、新たに競争の無い市場を創造していくか」

という視点から、「差別化」と「低コスト化」の双方を妥協せずに追求していく経営戦略
です。

ブルーオーシャン(新市場)へ参入した時、その差別化に低コスト化が伴わなかった場合、「真似をすれば儲かる」という事になってしまい、すぐに多くの模倣者(新規参入者)が表れる可能性があります。

故に、新市場における自社のブランドをより強固なものにしていく為にも、ブルーオーシャン戦略においては

「妥協しない差別化と低コスト化」

が求められるのだという事です。

<補足>
ブルーオーシャン戦略を知っている人の中には、

「ビジネスで成功するには、誰もやっていない事をやれば良い」

のように、本質を履き違えた解釈をしている人もいますが、この戦略において重要なのは「誰もやっていない事をやる」のではなく、「新たな需要を作り出す」という事です。

「誰もやっていない」という事には、以下の2通りが考えられます。

1. 無意味な事が分かっているから“あえて”誰もやっていない
2. まだその市場の価値に誰も気付いていない

これらの内、ブルーオーシャンとなり得るのは「2」の方ですが、大したリサーチもせずに「このビジネスは誰もやってないから儲かる!」と考えて新たなビジネスを始める人の場合、「1」の市場に参入してしまっているケースが多いように思います。

重要なのは「誰もやっていない事をやる」のではなく、「誰もやっておらず、しかも需要がある事をやる」という事です。

ブルーオーシャン戦略の事例

ブルーオーシャン戦略の成功事例をいくつかご紹介します。

1:Canon(複写機)

キャノンが創造したブルーオーシャンは、「個人用デスクトップ複写機市場」です。

従来の複写機(コピー機)は大型・高性能・高耐久の機械で、

「大量のコピーをする必要があり、機械のメンテナンスの手間も掛けたくない」

という人たちをターゲットとしていたのに対し、キャノンは「個人用の小型複写機」を製造する事によって、それまでターゲットになっていなかった

「使いやすい個人用の複写機が欲しい」

と思っていた人たちへの需要を新たに作り出しました。

既存市場における顧客を見直す事によって、新たな見込み客を発見した分かりやすい事例と言えます。

2:シルク・ドゥ・ソレイユ(サーカス)

シルク・ドゥ・ソレイユが創造したブルーオーシャンは、「大人向けのサーカス(エンターテイメント)市場」です。

従来のサーカス業界は主に子供をターゲットにしていた為、ビデオゲームなどの娯楽としての代替手段の登場による収益の減少に悩まされていました。

また集客面においても、人気が一部の花形パフォーマーに集中していた為、そのパフォーマーへ支払うコストも高騰している状況にありました。

そんな中、シルク・ドゥ・ソレイユは従来のサーカスが対象としていた「子供」ではなく、「大人」や「企業」をターゲットとした全く新しいサーカスを生み出し、競争の無い新たな市場を創造したわけです。

シルク・ドゥ・ソレイユは従来のサーカスでとくにコストが掛かっていた花形パフォーマーや動物によるパフォーマンスを削り、子供ではなく大人をターゲットとする事によって、

・運営コストの削減
・客単価の向上

を同時に達成し、従来の最大のサーカス集団が100年かかって稼いだ金額をわずか20年で稼ぎ出すという偉業を成し遂げています。

3:QBハウス(理容)

QBハウスが創造したブルーオーシャンは、「高機能性の理容市場」です。

従来の理容室は“散髪”以外にもマッサージや洗髪などの様々なサービスがあり、散髪までに1時間以上掛かる事が普通でした。(もちろん、今でもそんな理容室は多くあると思いますが)

その為、実際の散髪に掛かる時間はわずかなのにも関わらず、その他の部分で時間が掛かり、

「髪を切りたい潜在的な顧客」

を多く待たせてしまっていたわけです。

QBハウスは、そんな現状の中で実際の多くの顧客(忙しい社会人など)は散髪に1時間以上も時間を掛けたくないと思っている事に気付き、

・散髪以外のサービスの大幅な削減(約10〜15分)
・それに伴う料金の引き下げ(一律税抜1000円)

を行う事によって、理容師の時間当たりの収益を約50%上昇させると同時に、多くの潜在的な顧客の獲得に成功しました。

また、QBハウスは「個性的なベストスタイルの提案」をする事によって、顧客の来店頻度の増加にも力を入れています。

QBハウスは「理容市場」という意味では“全く新しい市場”を作り出したわけではありませんが、

「サービスを受けたくても受けられなかった潜在的な顧客」

に対する新たな需要を創造した好例だと言えます。

4:カセラ・ワインズ(ワイン)

カセラ・ワインズが創造したブルーオーシャンは、「気軽に楽しめるワイン市場」です。

カセラ・ワインズのイエローテイルブランドは、従来のワイン市場が主な顧客としていた「ワイン通」の人たちではなく、

・飲みやすさ(低タンニン、果実の甘味)
・選びやすさ(赤1種類、白1種類に絞る)
・覚えやすさ(ワラビーのラベル)
・楽しさや意外性

などの要素を付加する事によって、ビールやカクテルなどを飲んでいた顧客を新たにワイン市場に取り込む事に成功しました。

イエローテイルは「PLAY BY YOUR RULES.」=「ワインくらい自由じゃないと」をテーマに掲げ、発売後わずか2年で、アメリカの輸入ワイン市場でNo.1の売上を達成しています。

5:Apple(デジタル音楽)

Appleが創造したブルーオーシャンは、「デジタル音楽ダウンロード市場」です。

1990年代後半から音楽ファイルの違法ダウンロードが増加し始め、誰でも無料でデジタル音楽がダウンロードできるようになった事から、そのデジタル音楽を再生するMP3プレーヤーの需要も急速に高まっていました。

そんな中、AppleはiTunesを開発し、主要なレコード会社5社と契約する事により、

「合法的に、使いやすく、数多くの音楽をダウンロードできるサービス」

を提供すると同時に、

・新曲の入手しやすさ
・曲の検索容易性
・音質

などの付加価値を付ける事によって、無料ダウンロードサービスを超える優位性を獲得しました。

以来、10年以上に渡ってAppleはデジタル音楽ダウンロード市場を独占し続け、現在でも圧倒的なシェアを守り続けています。

<余談>
AppleのiTunesが多くの楽曲を集められた一方、iTunesに先駆けて音楽ダウンロードサービスを提供していたソニーは、多くの楽曲を集める事ができませんでした。

その理由としては、自ら音楽レーベルを運営していたソニーが、コピー防止や独自の音楽圧縮技術にこだわった結果だと言われています。

自社レーベルを持っていなかったAppleは、そういったしがらみとは無関係だった事もあり、複数の主要レコード会社と契約し多くの楽曲を集める事ができたわけです。

(個人的には非常に興味深く感じたのですが、Appleが契約したレコード会社の中には当の「ソニー」も含まれています)

ブルーオーシャンを創造する方法

ブルーオーシャン戦略は、先にも述べた通り

「“差別化”と“低コスト化”の双方を妥協せずに追求していく経営戦略」

です。

故に、既にレッドオーシャンとなっている市場を避け、実際にブルーオーシャン戦略を実行していくに当たっては、

差別化:その市場で提供されていない価値を提供する
低コスト化:その市場の競争要因を削減・削除する

これらがその重要な要素となってきます。

この「差別化」と「低コスト化」を実現する戦略を考える為のツールが、

・戦略キャンバス
・アクション・マトリクス

です。

1:戦略キャンバス

戦略キャンバスは、以下の目的を達成する為のツールです。

・市場における競争要因(=顧客にとっての価値)を把握する
・その競争要因における競合他社(商品)の強み・弱みを把握する

先にご紹介した「イエローテイル」の戦略キャンバスを例に挙げると、以下のようになります。

(出典:ブルーオーシャン戦略 p.81)

戦略キャンバスの横軸が「その市場の競争要因」、縦軸が「提供レベル(その競争要因がどの程度のレベルで提供されているか)」を表し、この曲線を「価値曲線」と言います。

上記の図から分かる通り、「イエローテイル」は高級ワインやデイリーワインと同じ競争要因を避け、

・飲みやすさ
・選びやすさ
・楽しさや意外性

といった既存のワイン市場で提供されていなかった要素によって差別化を図っているわけです。

<補足:レッドオーシャン戦略について>
企業の中には、ブルーオーシャン戦略ではなく、「既存市場の中での差別化」によって競合他社に勝とうとする「レッドオーシャン戦略」を採用するところも多いと思いますが、その場合には、

「ある競争要因において競合他社を圧倒する優位性を確保する」

という事が重要になってくると思います。

というのも、中途半端な差別化を図った場合、「競合他社と同じような価値曲線」にしかならないからです。

価値曲線は「顧客から見た企業(商品)の違い」とも言えますので、その差別化が十分でない場合、

「他との違いが大して分からない」

という見方になり、顧客がわざわざその企業を選ぶ理由が無くなってしまいます。

故に、レッドオーシャン戦略においては、先に挙げた図の“高級ワイン”のように「提供レベルと価格を上げる(=差別化)」か、“デイリーワイン”のように「提供レベルと価格を下げる(=低コスト化)」かのいずれかを選択する必要があるわけです。

2:アクション・マトリクス

戦略キャンバスによって市場の競争要因と競合の提供レベルを把握したら、新たな価値を創造する為に以下の4つの問いを立てます。

1. 業界常識の中で取り除くべき要因はどれか?(削除)
2. 業界が今までに提供しなかった要因として何を作るか?(作成)
3. 業界標準と比べて大幅に減らすべき要因はどれか?(削減)
4. 業界標準と比べて大幅に増やすべき要因はどれか?(上昇)

「アクション・マトリクス」はこの4つの質問の答えを表にまとめた、それに基づいて実際にアクションを起こす事によって「差別化」と「低コスト化」の両立を実現する為のツールです。

「イエローテイル」のアクション・マトリクスは以下のようになります。

(出典:ブルーオーシャン戦略 p.86)

先の戦略キャンバスにおけるイエローテイルの価値曲線を確認して頂ければ、

・どの要因を大幅に減らしているのか?
・どの要因を新たに提供しているのか?

などが一目瞭然だと思いますが、このようにしてブルーオーシャンを探していくのだという事です。

総括

以上、レッドオーシャンとブルーオーシャン戦略の意味、およびその成功事例などについて解説しました。

改めて内容をまとめます。

<用語の意味>
レッドオーシャン:熾烈な競争が繰り広げられている既存市場。
レッドオーシャン戦略:レッドオーシャンにおける経営戦略。主に「差別化」か「低コスト化」のいずれかを選択する。

ブルーオーシャン:まだ誰も参入してない新しい市場。
ブルーオーシャン戦略:ブルーオーシャンを創造する経営戦略。「差別化」と「低コスト化」の双方を追求する。


<ブルーオーシャンを創造する方法>
1. 戦略キャンバスを描く
 →その市場の競争要因を明らかにする
 →それらの競争要因における、競合他社の提供レベルを把握する


2. 4つの質問に答え、アクション・マトリクスを作成する
 Q1:業界常識の中で取り除くべき要因はどれか?(削除)
 Q2:業界が今までに提供しなかった要因として何を作るか?(作成)
 Q3:業界標準と比べて大幅に減らすべき要因はどれか?(削減)
 Q4:業界標準と比べて大幅に増やすべき要因はどれか?(上昇)


※ブルーオーシャンの創造プロセスにおいては、「誰もやっていない事を考える」のが重要なのではなく、「誰もやっておらず、まだ満たされていない需要を発見する」という事が求められる。

以上、参考になれば幸いです。

※ブルーオーシャン戦略について更に深く知りたい場合は、以下のサイトも確認しておく事をお勧めします。(今回の記事でも多くを参考にしています)

>ブルー・オーシャン・シフト(※外部リンク)

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