Keiです。

今回は、心理学を応用した「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」という技法について、

・フット・イン・ザ・ドア・テクニックの概要と実験
・日常やビジネスにおける活用事例
・フット・イン・ザ・ドア・テクニック使用時の4つのポイント
・フット・イン・ザ・ドア・テクニックへの対処法


などを具体的に解説していきたいと思います。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの概要


フット・イン・ザ・ドア・テクニック(Foot-in-the-door technique)とは、

「最初に小さな要求を承諾させ、徐々にその要求を大きくしていく事で、本当に承諾させたい要求へと近付けていく」

という交渉術であり、「段階的要請法」とも呼ばれます。


「フット・イン・ザ・ドア」という名前の由来は、

「セールスマンが玄関口から追い返されそうになった時に、ドアと壁の間に足を挟んでそのドアを閉めさせないようにした」

という描写を語源とする、「get a foot in the door(上手く最初の一歩を踏み出す)」から来ています。


つまり、最初の小さな要求が「ドアの間に足を挟む」という事であり、それを足掛かりにして「話を聞いてもらい」、最後には「セールス」という本来の目的を達成しようとするテクニックだという事です。

原理:何故テクニックが有効なのか?


フット・イン・ザ・ドア・テクニックが実際に多くの人に通用する理由は、「一貫性の原理」および「逐次接近法」によります。

一貫性の原理


一貫性の原理は、

「人は自分の信念や行動などに一貫性を持たせようとする」

という人の心理傾向です。


フット・イン・ザ・ドア・テクニックの場合は、最初に「小さな要求」を承諾する事によって、後に「もう少し大きな要求」を提示された時に、

「前に似たような要求を受け入れたんだから、この要求も同じように受け入れた方が良いんじゃないか・・・」

と感じる事から、「自分の行動に一貫性を持たせたい」という心理が働いていると言えます。


>一貫性の原理の詳細な解説はこちら

逐次接近法


逐次接近法は動物をしつける時などにも使用できる「学習法」で、

「目的の行動に近づける為に、小さな行動から徐々に(逐次)近付けていく(接近)方法」

です。


また更に、逐次接近法は以下のように「スモールステップの原理」と「即時強化」に分けられます。

スモールステップの原理:目標を細分化し、徐々に最終目標へと近付ける
即時強化:行動が終わった時にすぐに強化(褒める、餌を与える)する

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの場合、「スモールステップの原理」によって要求の承諾をさせやすくなると同時に、即時強化(褒める、お礼を述べるなど)による、

・相手が依頼者に対して親近感を抱く
・「要求そのもの」に対する関心度が高まる


といった効果も期待する事ができます。


フット・イン・ザ・ドア・テクニックがシンプルながら非常に強力な理由は、以上のような「効果的な心理作用」を組み合わせた結果だと言えるわけです。

<補足>
フット・イン・ザ・ドア・テクニックと同じく「一貫性の原理」を応用した別の技法に、「ローボール・テクニック」が挙げられます。

>ローボール・テクニックの具体例とフット・イン・ザ・ドアとの違い。

ローボール・テクニックも非常に強力なテクニックですが、こちらは基本的には

「相手にとって都合の悪い情報を意図的に隠す」

という、「相手を騙す」技法になりますので、日常生活やビジネスに活用する際にはフット・イン・ザ・ドア・テクニックを活用する事をお勧めします。

心理学者の実験


フット・イン・ザ・ドア・テクニックの効果を検証した実験には様々なものがありますが、例えば初期の実験には以下のようなものがあります。

<実験>
ある心理学者のグループが、カリフォルニア州の主婦に電話を掛けて頼み事をした。

頼み事の内容は以下の通り。

Q1:使用している家庭用品についての質問に答えてもらっても良いか?
Q2:使用している家庭用品の一覧を作成する為、5〜6人を家に上がらせて食器棚や保管場所を2時間ほど調査しても良いか?

そして、これらの要求がどの程度承諾されるかを調査する為、以下の2通りの条件で実験を行った。

条件1:Q1の質問をして、3日後にQ2の質問をする。
条件2:Q2の質問のみをする。

実験の結果、条件2のケースと比較して、条件1のケースでは「約2倍」の同意率が得られた。

フリードマンとフレーザーの実験


また、1966年にフリードマンとフレーザーによって行われた以下の実験もよく知られています。

実験では、まずボランティア(実験の協力者)がカリフォルニアの住民の家を訪問し、「安全運転」と書かれている小さなステッカーを車の窓に貼ってほしいと依頼した。その二週間後、別のボランティアが訪問し、「安全運転をしよう」と下手な字で書かれた(家の景観を害するような)看板を庭先に立ててほしいと依頼した。

その結果、76%もの住民が看板を庭先に立てることを承諾した。ちなみに、はじめから大きい要請をした場合(看板を庭先に立ててほしいと単純に依頼した場合)には17%の住民からしか承諾を得られなかった。

引用:説得と交渉の営業心理学


こちらの実験では、事前に小さな要求をする事によって、最終的に大きな要求をした時に「約4.5倍」もの同意率の差が生まれたわけですね。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの活用法


フット・イン・ザ・ドア・テクニックは先にも解説した通り、

「まず小さな要求を承諾させ、徐々に要求を大きくしていく」

というだけのシンプルな技法ですので、ビジネスに限らず日常生活でも積極的に活用していく事ができます。

「皿洗い」をやってもらう


例えば、家族と一緒に住んでいて普段全く皿洗いをやってもらえない人が、何とか皿洗いをやってもらいたいと考えているとしましょう。


このケースでは、まずは「皿洗いに関連する小さな要求」から始めるのが有効であり、その「小さな要求」を見つけ出す為には、先に解説した「スモールステップの原理」が効果的です。


例えば、皿洗いを以下のような小さなステップに分割してみます。

ステップ1:食器を一箇所にまとめてもらう
ステップ2:食器をシンクまで持っていってもらう
ステップ3:食器を軽く水で流してもらう
ステップ4:食器を洗ってもらう(=目標達成)
ステップ5:洗った食器を拭いてもらう
ステップ6:洗った食器を片付けてもらう
・・・

このようにステップを分割した後、まず最初に「ステップ1」の要求を承諾してもらう事から始めて、徐々にステップ2、ステップ3・・・と段階を踏んで大きな要求へと進めていくわけです。


そして、要求を承諾してもらった後には、ステップ1のような非常に簡単な事であっても「即時強化」(お礼を言う、褒めるなど)を行う事がポイントになってきます。


と言うのも、即時強化を効果的に行う事ができれば、

・要求そのものに対する関心度
・依頼者(あなた)に対する親近感


などを高める事ができ、より効率的に「次のステップ」へと進んでもらえる可能性が上がるからです。


このように、いきなり頼んでも嫌がられるような要求であっても、「簡単にできる事」から着実に進めていけば、最終的には受け入れてもらえる可能性があります。

ビジネスにおける活用事例


実際のビジネスの場面においては、多くの場合フット・イン・ザ・ドア・テクニックと併せて、他の心理作用も複合的に働いている傾向にあります。

スーパーなどでの「試食」


例えばスーパーなどでよくある「試食」の場合は、フット・イン・ザ・ドア・テクニックと「返報性の原理(=お返しをしなければならないと思う心理)」が組み合わされています。


つまり、試食をすると

「本来有料の商品を無料で食べたんだから、お返しに商品を購入した方が良いんじゃないか」

という心理が働くと同時に、試食後に

「良かったら今晩のおかずにどうですか?」

などと言われた場合、「試食」という「小さな要求」を受け入れてしまっている事から、それに関連する「商品の購入」という「大きな要求」も受けれやすくなるわけです。

「1週間無料」のサービス


また他にも、「1週間無料でお使い頂けます」といった商品やサービス。


こういったものの場合、フット・イン・ザ・ドア・テクニックや返報性の原理に加えて、「保有効果」や「現状維持バイアス」などの心理作用も働いていると考えられます。


つまり簡単に言えば、

「無料で使ったんだからお返ししないといけない(=返報性の原理)」
「使ってみたら手放すのが惜しくなった(=保有効果)」
「わざわざ返品したりするのが面倒くさい(=現状維持バイアス)」


のような感情的な動きが「商品やサービスの継続利用」に影響している傾向があるわけです。

<補足>
「保有効果」および「現状維持バイアス」についての詳細はこちらの記事で解説していますので、興味があれば目を通してみてください。

>保有効果と現状維持バイアス:事例とマーケティングへの活用。

テクニック使用時の4つのポイント


フット・イン・ザ・ドア・テクニックの使用時には、以下の4つのポイントを意識する必要があります。

1. 最初の要求を簡単なものにする
2. 要求の差を大きくしすぎない
3. 要求の各段階に「関連性」を持たせる
4. 即時強化に「お金」を与えない


逆に、それぞれのポイントを守らなかった場合、テクニックを使用しても「大して効果が出ない」という事になりかねませんので、注意してください。


それでは、それぞれのポイントを具体的に解説します。

1:最初の要求を簡単なものにする


フット・イン・ザ・ドア・テクニックでは、「最初の小さな要求」が断られてしまえば、その時点で「その次の要求」をする事も不可能になってしまいます。


故に、「最初に行う小さな要求」は可能な限り受け入れられやすい「簡単な要求」にする必要があるのです。


例えば「最終的に100万円を騙し取りたい」と思っているなら、いきなり「100万円を貸して欲しい」と頼んでもまず上手くいかないと思います。


よって、まずは

「ジュース買おうと思ったけど10円足りなかった!
すぐ返すからちょっと貸してくれない?」


のような小さな要求から始めて、以下のように「借りたお金をちゃんと返す」という実績と信頼を積み重ねていくわけです。

10円を借りる→返す
100円を借りる→返す
1000円を借りる→返す
・・・
10万円を借りる→返す

このようなステップを踏んでいけば、

「絶対に返すから、100万円を貸してくれないか」

と頼めば、「まあ、こいつなら貸しても返してくれるから・・・」と、最終的に100万円を借りられる可能性も格段に高くなると考えられます。

(この段階で行方をくらませれば、「目的達成」という事です)

※ここで紹介した例は、絶対に真似をしないようにしてください。

2:要求の差を大きくしすぎない


「最初の要求」と「次の要求」の差を大きくし過ぎた場合、「次の要求」が承諾されない可能性が高くなります。


例えば、「10円貸して」という要求の次に「100万円貸して」と要求したとしても、そんな要求はまず受け入れられないはずです。


よって、最初の要求とその次の要求の間の「差(段階)」はなるべく小さなものにした方が良いと思います。

3:要求の各段階に「関連性」を持たせる


これは例えば、本命の要求として「皿洗いをしてもらいたい」という場合に、

「皿洗いとは関係の無い(薄い)要求」

を「小さな要求」として用いた場合には、フット・イン・ザ・ドア・テクニックの効果が低くなるという事を意味します。


ある実験によると「ある程度関連性のある要求(上記の例だと“家事”に関する要求など)」なら効果がある事が実証されていますが、

・直接的な関連性のある要求
・間接的にしか関連性の無い要求


であれば当然「直接的な関連性のある要求」方が効果は高いです。


したがって、基本的には「本命の大きな要求」を定めた上で、そこに向かうステップを「自然な流れ」で細分化した上でテクニックを用いるようにしてください。

4:即時強化に「お金」を与えない


これは、

「小さな要求を承諾してもらった後にお金を与えない」

という事を意味します。


フット・イン・ザ・ドア・テクニックを、「家事などを自発的にやってもらえるようになりたい」といった目的の為に活用したい場合にはとくに、

「どれだけ自発的にその行動を取ってもらえるか」

が重要になってきますが、報酬としてお金を与えてしまうと、

「お金が欲しいからその行動を取る」

という事になりかねません。


つまり、「要求を承諾してもらったお礼」としてお金を与えるようにした場合、

「お金がもらえないならやりたくない」

という結果になる可能性があるわけです。(こういった心理は「アンダーマイニング効果」とも呼ばれます)


よって、小さな要求に対する即時強化には「お金」ではなく、「お金を伴わないお礼(感謝の言葉など)」などで応える事をお勧めします。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックへの対処法


フット・イン・ザ・ドア・テクニックへの主な対処法としては、以下の2点が考えられます。

1. 「最初の小さな要求」を承諾しない
2. 自分の中に明確な「承諾できないライン」を引く

1:「最初の小さな要求」を承諾しない


フット・イン・ザ・ドア・テクニックは、「最初の小さな要求」を足掛かりにして「次の小さな要求」へと繋げ、最終的に「本命の大きな要求」を承諾させる技法です。


故に、仮に「最初の小さな要求」が承諾されなかった場合、その時点でテクニックは失敗となります。


したがって、このテクニックへ確実に対処する為には、

「どんな小さな要求であっても、それが少しでも“承諾したくない要求”であれば断る事」

が非常に効果的です。

2:自分の中に明確な「承諾できないライン」を引く


ただ、「1」の対処法は突き詰めれば「人からの要求は何でもかんでも断る」という事にもなりかねません。


何故なら極端な話、「そっちに落ちた消しゴム拾って」のような小さな要求を、最終的に「デートしよう」のような大きな要求に繋げていく事も可能だからです。


このように「要求」というものを捉えれば、「最初の小さな要求を断る」という対処法は、「お金貸して」のようなケースを除けば、あまり現実的ではありません。


よって、フット・イン・ザ・ドア・テクニックへの基本的な対処法としては、こちらの

「自分の中に明確な“承諾できないライン”を引く」

という方法をお勧めします。


例えば以下のようなものが、「承諾できないライン」として挙げられます。

・お金を貸す時には、1000円以上は絶対に貸さない。
・食器をシンクには持っていくけど、絶対に洗わない。
・3人では食事に行くけど、2人では絶対に行かない。

このような「要求に対する明確な線引き」をしておけば、いざ小さな要求を承諾した場合でも、大きな要求に対して「感情」や「習慣」に流されずに対処できるようになるはずです。

総括


以上の内容をまとめます。

<テクニックの概要>

・フット・イン・ザ・ドア・テクニック(段階的要請法)とは、「最初に小さな要求を承諾させ、徐々にその要求を大きくしていく事で、本当に承諾させたい要求へと近付けていく」という交渉術である。

・フット・イン・ザ・ドア・テクニックが実際に多くの人に通用するのは、以下の原理などによる。
一貫性の原理:自分の信念や行動に一貫性をもたせようとする心理傾向(=自分の行動に責任を持とうとする心理)
 →詳細な解説はこちら

逐次接近法:「スモールステップの原理」と「即時強化」を組み合わせた学習法
 ・スモールステップの原理=目標を細分化し、徐々に最終目標へと近付ける
 ・即時強化=行動が終わった時にすぐに強化(褒める、餌を与える)する

<テクニックの活用ステップ>
ステップ1:最終的に承諾させたい大きな要求を明確にする
ステップ2:大きな要求を小さな要求に細分化する
ステップ3:小さな要求を承諾させ、それに対して即時強化を行う
ステップ4:より大きな要求に対してステップ3を繰り返す

<テクニック使用時の4つのポイント>
1. 最初の要求を簡単なものにする
 →最初から承諾されにくいような「大きな要求」をしない

2. 要求の差を大きくしすぎない
 →なるべく要求の差を小さくして徐々に「本命の目標」へと近付けていく

3. 要求の各段階に「関連性」を持たせる
 →皿洗いをさせたいのなら、皿洗いに関連性のある要求を積み重ねる

4. 即時強化に「お金」を与えない
 →小さな要求への報酬は「褒める」「お礼を述べる」などにする

<対処法>

・「最初の小さな要求」を承諾しない
 →あまり現実的ではないが、「お金に関する要求」などには効果的。

・自分の中に明確な「承諾できないライン」を引く
 →要求が大きくなってきた時に「感情」や「習慣」に流されないように注意する。

以上、参考になれば幸いです。


また、こちらの記事も併せて参考にしてください。

>ローボール・テクニックの具体例とフット・イン・ザ・ドアとの違い。

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