Keiです。

今回は、行動経済学(または心理学)の分野における

「フレーミング効果」

の概要、およびその活用事例について解説します。


フレーミング効果を意識した“言葉遣い”をする事によって、得られる結果が全く違ってくる可能性もありますので、是非ビジネスや普段の生活の中で効果的に活用して頂ければと思います。

(もちろん悪用は厳禁です)

フレーミング効果の概要


フレーミング効果(framing effect)とは、一言で言えば

「問題の提示の仕方によって、思考や判断に不合理な影響を及ぼす現象」

を指します。


私たちは物事(文章など)を理解する時に、無意識的に何らかの“解釈の枠組み(フレーム)”を使っています。


人それぞれ使うフレームは異なりますので、例えば同じ物事を指した文章を読んだり、同じ状況に陥った場合でもその“解釈の仕方”が異なります。


と、こんな風に説明しても多分物凄く分かりにくいと思います(笑)


なのでもう少し分かりやすく言えば、フレームとは要するに「固定概念」とか「色眼鏡」という風に捉えても良いかもしれません。


本来の世界の見え方が何の色眼鏡も掛けていない状態だとすると、フレームが掛かっている状態というのは例えば「青い色眼鏡を掛けている状態」です。


“青い色眼鏡”を掛けて赤い物を見れば紫色に見えますし、青い物を見れば物があるように見えない場合もあると思います。


また同じ物を見たとしても、“赤い色眼鏡”を掛けて赤い物を見れば物が見えない事もあるでしょうし、青い物を見れば紫色に見えるでしょう。


人はこのように、それぞれ違った“色眼鏡(フレーム)”を掛けて物事を見ていますので、

・同じ物を見ているのに違って見える
・物によっては見えない(認識できない)物もある


といった場合も起こり得えます。


例えばこちらはYouTubeから適当に拾ってきたオリンピックの動画ですが、実況者と解説者が“日本人”というフレームで話しているのがよく分かると思います。



この試合結果は日本側からすれば「逆転勝ち」ですが、“デンマーク人”のフレームで見れば「逆転負け」です。


試合の結果を見れば以下の2つの文章は“置き換え可能”ですから、同じ意味を表しています。


・日本がデンマークに勝利した
・デンマークが日本に敗北した



しかし、“文章の意味”を「文章が引き起こすイメージ(連想)」と捉えるなら、これらの文章は全く違った意味を持つ事にもなります。


フレーム(色眼鏡)の違いによって、同じ物事を見ているにも関わらず、全く別の受け取り方をしてしまうわけですね。


ですので当然、

「問題の提示の仕方によって、思考や判断に不合理な影響を及ぼす」

という事もあり得ます。


言ってみれば、先ほどの例のように“フレーム”を意図的に操作する事によって、相手の判断の仕方をある程度の範囲でコントロールする事も可能だという事です。

フレーミング効果の具体例


もう少し別な例からフレーミング効果について見てみましょう。

「費用」と「損失」


まずはこちらの質問に答えてみてください。

10%の確率で95ドルもらえるが、90%の確率で5ドルを失うギャンブルをやる気がありますか?

そしてその次に、こちらの質問に答えてみてください。

10%の確率で100ドルもらえるが、90%の確率で何ももらえないクジを5ドルで購入する気がありますか?

よく質問の内容を確認して頂ければ分かる通り、結果的には上記2つの質問は同じ事を言っています。


どちらも当たれば95ドルが手元に残り、外れたら5ドルを失う結果になります。


ですので、合理的に物事を考えられる人なら2つの質問の答えは両方とも同じになるはずです。


しかし実験の結果、恐らくあなたも予想できる通り“2つ目の質問だけ”に「はい」と答える人が圧倒的に多かったそうです。


これは言わば、1つ目の質問は5ドルを「損失」として捉え、2つ目の質問は5ドルを「費用」として捉えているわけですね。


多くの人は“費用”よりも“損失”の方が圧倒的にマイナスのイメージを感じますので、同じ内容であってもこのように質問の形が違うだけで答えが変わる現象が起こる事になります。

(“損失”よりも“費用”と表現した方が、ギャンブルを受け入れやすくなる事が分かっています)


他にも同じ“商品の代金を支払う”という場合でも、

・費用
・出費
・損失
・投資


といった表現の仕方に応じて買い手側の受ける印象は全く変わってきます。


また、例えばETCには料金割引制度として「休日割引」というものがありますが、これを「平日割増」と言えば“損失感”が強くなります。

「生存」と「死亡」


こちらは“プロスペクト理論”の記事でも扱った内容になります。


1つは「肺がんの治療法としてどちらを選ぶか」という質問で、こんな内容です。

実験に参加した医師を2つのグループに分け、肺がんの治療法としてどちらを選ぶか訊ねた。

・5年後の生存率は高いが、短期的には危険な手術
・5年後の生存率は手術より低く、短期的には安全な放射線治療

グループの片方には生存率に関するデータ、もう一方には死亡率に関するデータを見せた。

例えば、手術の短期的な結果に関する記述は以下の通り。

・術後1ヶ月の生存率は90%です。
・術後1ヶ月の死亡率は10%です。


この結果「手術」を選んだ医師は、前者の記述では「84%」となり、後者の「50%」より圧倒的に多かった。


もう1つは「アジア病問題」と呼ばれる有名な問題で、こんな実験でした。

放置すれば死者数が600人に達する見込みの「アジア病」への対策として、以下の2つのプログラムが提案された。

◆問1:どちらのプログラムを選ぶか?

プログラムA:200人が助かる。[72%]
プログラムB:確率1/3で600人が助かるが、確率3/2で1人も助からない。[28%]

◆問2:どちらのプログラムを選ぶか?

プログラムa:400人が死ぬ。[22%]
プログラムb:確率1/3で一人も死なずに済むが、確率3/2で600人が死ぬ。[78%]

※[]内は実際にプログラムを選んだ人の割合。


前者の実験では「生存率」「死亡率」と表現を変えただけで、後者の実験では「助かる」「死ぬ」と表現を変えただけだという事が分かると思います。


つまりは問題を“死亡フレーム”で見るか、“生存フレーム”で見るかという違いしかありませんが、「どちらの選択肢を選ぶか」には大きな違いが生じる結果となりました。

「オプトイン」と「オプトアウト」


サイトの訪問者がメールアドレスを登録するプロセスにも“オプトイン”という名前が付いていますが、こちらの“オプトイン”と“オプトアウト”は「臓器提供の意思表示」の話です。


臓器提供の意思を示す為の“ドナーカード”って、日本ではこんな感じになってます。(画像引用:日本臓器移植ネットワーク

で、平成25年度の「臓器移植に関する世論調査」によると、その臓器提供の同意率(臓器提供の意思がある人)の割合は「12.6%」だったそうです。


これって他の国ではどれぐらいかご存知でしょうか?


実は国によって同意率は大きく異なり、2003年の発表によるとヨーロッパ各国では以下のようになっています。

オーストリア:99%
スウェーデン:86%
ドイツ:12%
デンマーク:4%

デンマークがわずか4%なのに対して、オーストリアはなんと99%。信じられないぐらい大きな差がありますね。


この違いを生み出しているのが、“オプトイン方式”と“オプトアウト方式”という質問の形式の違いです。


上に挙げたヨーロッパの国で言えば、オーストリアやスウェーデンは“オプトアウト方式”、ドイツやデンマークは“オプトイン方式”を採用しています。


“オプトイン方式(明示的同意)”は日本も採用している質問形式で、先に挙げたドナーカードの画像をご確認頂ければ分かる通り、

「臓器提供の意思がある場合は○で囲んでください」

といった形式になっています。


つまりは明示的に「臓器提供します」と意思表示しない限りは、臓器提供しない意思があるものと見なしています。


他方、“オプトアウト方式(推定同意)”はオプトインと反対で、

「臓器提供の意思が無い場合は○で囲んでください」

といった形式になっています。


違いは「ただそれだけ」でしかありません。


決してオーストリア人が臓器提供に積極的な人が多いとか、デンマーク人に臓器提供したくない人が多いとかって話では無いわけです。


恐らくそれぞれの国で採用する方式を逆にするだけで、同意率も逆転する事になるでしょう。


非常に雑な言い方をすれば、

「ほとんどの人はドナーカードの内容を確認するのをサボっている」

と言えるかもしれません(笑)


日本では臓器提供者が少ない事が問題視されていますが、オプトアウト方式を採用するだけでも状況が大きく改善する可能性もあるかもしれません。

(もちろん、日本の場合は脳死判定基準等の問題もあります)

マスメディアにおけるフレーム


ニュースの報道の仕方(フレームの捉え方)によっては、私達がその報道から受ける印象は大きく変わってきます。

アメリカのマスコミュニケーション研究者は、そのようなフレームとして数種類を提示している。

たとえば、「紛争フレーム」の例では、アメリカ大統領選挙における共和党と民主党の争いを両陣営の紛争としてとらえて、ことさら意見が衝突する側面を強調して報道すると、受け手もそのように理解する。

また、「ヒューマン・インパクトのフレーム」は、事件の被害者などに対して共感や同情といった人間性を強調した視点からその問題を報道する際に用いられる。

引用:政治学


“ヒューマン・インパクトのフレーム”に関しては、例えば日本ユニセフ協会のCMが分かりやすいと思います。



5歳になる前に栄養不良で亡くなる子供は毎年300万人を超えるとも言われていますが、上記のCMではその内の「1人」にフォーカスする事によって同情を上手く引き出しています。


実際日本ユニセフ協会が集める寄付金は結構な金額で、2016年には「176億3,000万円」に達しています。


仮にCM(広告)の内容が、

「毎年300万人以上の子どもたちが栄養不良で命を落としています」

といったものになれば、寄付金の額は大きく減少する事になるでしょう。


ともあれ、マスメディアの報道の仕方によっては受け手の認識や感情は大きく変わってきますし、実際に私達も間違いなくそういった“フレーム”に大きく影響を受けています。


例えば私が興味深いと思ったデータにこんなのがあります。



こちらは厚生労働省の「平成21年度:不慮の事故による死亡の年次推移」の中の「家庭における主な不慮の事故の種類別にみた死亡数の年次推移」からの引用です。


ご覧頂ければ分かる通り、家庭での死因って火災よりも「窒息」とか「溺死」の方が何倍も多いです。


ニュースで取り上げられる内容は火災の方が圧倒的に多いですから、恐らく多くの人も私と同じように火災の方が死亡者が多いようなイメージがあるんじゃないでしょうか?


この例は“利用可能性ヒューリスティック”の効果でもありますが(説明は省略)、いずれにせよマスメディアがどんな風にニュースを報道するかによって私達がどのように物事を捉えるかも変わってきます。


場合によっては「知らない内に思考の方向性を操作されていた」という可能性もありますので、是非普段から意識してみる事をお勧めします。

フレーミング効果:総括


以上、

「フレーミング効果」

の概要、およびその具体例と活用事例について簡単に解説しました。


簡単に言えば私達は常に何らかの“色眼鏡”を掛けて世界を見ているという事であり、他人(マスメディアなど)からもたらされる情報にも常に何らかの“色眼鏡”が掛かっている、という事です。


多くの人はフレーム(解釈の枠組み)を通して物事を解釈しているという事自体を認識していませんので、知らず知らずの内に行動や思考の選択肢をコントロールされている可能性もあるでしょう。


というわけで、今回の話からフレーミング効果を知ったからには、是非普段から

「自分はどんなフレームを持っているのか?」

を意識して生活してみてください。


フレームを普段から意識する事は、生活習慣を改善するなど、自分の行動をコントロールする際にも非常に役立ちます。


また他にも何か問題を提示された時に、

「逆の見方をすればどうなるか?」

を意識する事で合理的な判断を下す際にも役立ちますので、そういった思考習慣を身に付ける事もお勧めです。


以上、参考にして頂ければ幸いです。


Kei


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