Keiです。

今回は、行動経済学における「プロスペクト理論」と「損失回避性」の具体事例、およびこれらの理論のマーケティングへの活用について解説します。


プロスペクト理論については割と、

「人間が利得よりも損失の方が強く感じる心理的傾向について説明した理論である」

といったように「損失回避性」と混同して理解している人も多いようですが、この認識だと少々問題がありますので、是非この記事を通して正確な認識を身に付けて頂ければ幸いです。

プロスペクト理論と損失回避性


プロスペクト理論の概要は、以下のシンプルなグラフ(価値関数)で説明する事ができます。

画像引用:https://www.behavioraleconomics.com


このグラフの縦軸は「心理的価値」、横軸は「金額(ドル)」を表しています。


心理的価値は「損得の感覚」を表したもので、心理的価値がプラスになれば「得をした(利得)」と感じ、逆にマイナスになれば「損をした(損失)」と感じるのだと考えてください。


上記のグラフからすぐに分かる事は、以下だと思います。

・金額がプラスの領域では「得した」と感じる
・金額がマイナスの領域では「損した」と感じる


これは要するに、

「金が手に入ったら嬉しく感じ、逆に失ったら悲しい(悔しい)と感じる」

といった事を表しているわけです。


次にグラフの傾きについて確認すると、金額がプラスの領域よりもマイナスの領域の方が明らかに傾きが大きくなっている事が分かると思います。


具体的には、+100ドルの時の心理的価値は(1目盛りを1とすると)「+1.5」ですが、-100ドルの時の心理的価値は「-3」です。


これがつまり

「人間は利得よりも損失の方が2倍強く感じる」

という事を表しており、“人間は利得を得るよりも損失を回避する心理的傾向が強い”という理論の説明にもなっています。


そしてこの「損失を回避する心理的傾向」の事を、

「損失回避性(Loss aversion)」

と呼んでいるわけです。

プロスペクト理論の3つの特徴


さて、グラフの概要の説明はこのぐらいにして、プロスペクト理論そのものの説明に入りましょう。


プロスペクト理論は、先に触れた“損失回避性”を含めて以下の3つの特徴を備えています。

1. 参照点
2. 感応度逓減性
3. 損失回避性


よって、損失回避性というのはあくまでもプロスペクト理論の一部であり、理論全体としてはその他に「参照点」と「感応度逓減性」も併せて捉えていく必要があるという事です。


以下、それぞれの特徴について具体的に解説していきます。

1:参照点


1つ目の特徴は“参照点”です。


これは、利得や損失に対する心理的価値(得した、損したという感覚の強さ)の評価は、

「主観的に設定した参照点」

を基準にして行われるという事を意味します。


大抵の場合の参照点は“今の状態(現状)”です。


ほとんどの人は「今」よりもお金が増えたら嬉しいと感じ、逆に「今」よりもお金が減ったら嫌な気持ちになると思います。


例えば現在の所持金が10万円なら、2万円増えて12万円になったら「得した」と感じ、1万円失って9万円になったら「損した」と感じる。


現在の金額が100万円なら、10万円増えて110万円になったら「得した」と感じ、5万円失って95万円になったら「損した」と感じる。


ここで注意すべきなのは、心理的価値は「金額の大小」で決まるのではなく、「参照点からの金額の変化」によって決定付けられるという事です。


ですので、金額の大小で言えば明らかに

95万円 > 12万円

が成り立ちますが、心理的価値の大小を比較すると逆に

[100万円から5万円減った(95万円)時の心理的価値] < [10万円から2万円増えた(12万円)時の心理的価値]

が成り立ちます。


参照点はとくに「金額」に限らず、生活環境など様々な要素でも同じ事が言えますので、

「発展途上国(または紛争国)の人はもっと大変な生活をしてるんだから・・・」

といった事を言われて「確かに理屈ではそうかもしれないけど、何となく釈然としない」と思った経験があるなら、この「参照点」の話が参考になるかもしれません。

2:感応度逓減性


2つ目の特徴は“感応度逓減性”です。


一見すると難しい言葉に思えるかもしれませんが実はシンプルで、

「感応度(感じ方)が逓減する(次第に減る)性質」

の事を意味します。


感応度逓減性については、改めてプロスペクト理論のグラフを見て頂ければ簡単に理解できるかと思います。


グラフの傾きは参照点(グラフの原点)に近いところでは大きく、縦軸から離れれば離れるほど緩やかになっていきます。


例えば、所持金の変化について

1:0円から1万円に増加
2:10万円から11万円に増加
3:100万円から101万円に増加

といった3パターンを想定してみます。


このような場合、「3」のケースよりは「1」のケースの方が明らかに“所持金が増えたという感覚”は強く感じるのではないかと思います。


100万円から1%増えて101万円になるよりも、10万円から10%増えて11万円になった方が得した感じがすると思いますし、全くゼロの状態から1万円を手に入れた方が更に得した感じは強くなるのではないでしょうか。


より大きな金額差で比較するなら、

「年収1億円の人が100万円を稼ぐ」

よりは、

「年収120万円の人が100万円を稼ぐ」

といった状況をイメージすれば、後者の人の方が心理的価値は大きくなると考えられます。


もちろん、利得に限らず損失についても同じように感応度逓減性があります。


この事は、

・これまで借金した事がない人が1万円の借金をする
・既に1億円の借金がある人が更に追加で1万円の借金をする


といった2つの極端なケースをイメージすると分かりやすいです。

3:損失回避性


最後の特徴は、先に説明した“損失回避性”です。


改めて説明すると、損失回避性とは

「利得よりも損失の方が(参照点に近いところでは)2倍ぐらい強く感じる」

という心理的な傾向性を言います。


「何故、利得よりも損失の方が強く感じるのか?」については、生物の進化の歴史に由来すると考えられています。


簡単に説明すると、

「同程度のチャンスとリスクが同時に存在するなら、チャンスよりもリスクに反応した方が種としての存続率が上昇する」

という事です。


私たちははるか昔から種として存続してきたわけですが、それも「目先のチャンス」よりは「その裏に潜むリスク(危険性)」の方により敏感に反応し、対処してきたからこそと言えます。


未知の生物を発見した時に、チャンスと見て「食料だ」と考えるか、それともリスクを想定して「敵だ」と考えるか。


結果として「リスク」の方に強く反応してきたからこそ、現代まで生き延びる事ができた人間は一般に損失回避性を持っている、という事です。


以上、プロスペクト理論の3つの特徴である、

1. 参照点
2. 感応度逓減性
3. 損失回避性


について解説しました。


ちなみに人間には“損失回避性”が備わってはいるものの、必ずしも常にリスクを回避しようとするわけではなく、同じ損失同士を比較した場合には

「確実な損失」

よりは

「不確実でより大きな損失」

を選択する傾向がある事が実験からも明らかになっています。


例えば、以下のような場合、あなただったらAとBのどちらを選択するでしょうか。

A. 確実に9万円を失う。
B. 90%の確率で10万円を失う。

Bのケースだと高確率でAよりも悪い状況に陥ってしまいますが、感応度逓減性などの影響により多くの人は「確実な損失」よりも「損をしない可能性も少しはある、より大きな損失」を選ぶ傾向があります。

(期待値的にはAもBも同じ「-9万円」です)


この事は、ギャンブルで損を被って泥沼に沈んでいく心理を想像すれば分かりやすいかもしれません。


「今降りたら負けが確定してしまう」という状況で一縷の望みを賭け、

「次こそは・・・次こそは勝てるかもしれない・・・」

と考え、より大きなギャンブルへと挑んで更に負けが込んでしまう。


そんなイメージです(笑)


ちなみに、以下のようなケースでは「B」が選ばれやすい傾向がある事が知られています。

A. 10%の確率で10万円を失う。
B. 90%の確率で1万円を失う。

これは、AとBの選択肢を同時に与えられた場合には、10万円を失うリスクを回避する為に1万円の「保険」を掛けている状況だと考えると理解しやすいと思います。

プロスペクト理論のマーケティングへの活用


最後に、プロスペクト理論のマーケティングへの活用について触れたいと思います。


繰り返しになりますが、プロスペクト理論を理解する上では

1. 参照点
2. 感応度逓減性
3. 損失回避性


という3つの特徴と、これらの特徴を表す以下のグラフだけを覚えておけば問題ありません。



そして、プロスペクト理論をマーケティングなどに活用していく際には、


1. 参照点を設定する
2. 損失回避性を意識する



といった手順を踏んでいくのが効果的です。


参照点はあくまでも「主観的」なポイントですから、例えば広告の中で「商品を手にした未来の姿(結果)」を鮮明にイメージさせる事ができれば、その“未来の自分”が参照点になります。


ですから、まず考えられるのは

「その商品を手にした未来の姿を鮮明にイメージさせる」

というシンプルな方法です。


自動車だったら自動車に乗っている姿をイメージさせる。

ダイエット食品だったら痩せている姿をイメージさせる。

旅行だったら旅先で大いに楽しんでいる姿をイメージさせる。


商品を手にしていない現状は何も変わっていない状態でも、広告などの中で「商品を手にした未来」を参照点としてイメージさせる事によって、

「現状に対する擬似的な損失感」

を与えていく事ができます。


そうやって損失感を与えた上で、商品購入に際して発生する金銭的なリスクなどを(保証などの手段によって)排除していく事ができれば、


商品購入の利得 > 商品購入の損失(リスク)


とする事ができますので、効率的に商品を販売していく事ができるわけです。


もちろん、“商品が手に入った未来”と同時に、“商品を手にしなかった未来”について伝えていくのも効果的になります。


大雑把に言えばこんなイメージです。

1. この商品を手にしたあなたはこんな素晴らしい未来を手に入れる事ができます。
2. この商品を手にしなかったら現状は変わらず、将来こんな悲惨な未来を迎える事になります。
3. あなたはどちらが良いですか?


ダイエット系の商品であれば、「ダイエットに成功して理想の未来を手に入れた自分」を鮮明にイメージさせると同時に、「ダイエットできず現状維持し続ける惨めな未来」も鮮明にイメージさせる事ができれば、見込み客に対してより強烈なイメージを与えていく事ができると思います。

「データ」を伝える際のテクニック


補足事項として、「データ」を伝える時のポイントについても触れておきます。


何らかのデータを「その商品の利得や損失」として伝える際には、その伝え方によって全くデータの印象も変わってきますので、その点も意識しておいた方が良いです。


例えばカーネマンの著書「ファスト&スロー」では、以下のような事例が紹介されています。

実験に参加した医師を2つのグループに分け、肺がんの治療法としてどちらを選ぶか訊ねた。

・5年後の生存率は高いが、短期的には危険な手術
・5年後の生存率は手術より低く、短期的には安全な放射線治療

グループの片方には生存率に関するデータ、もう一方には死亡率に関するデータを見せた。

例えば、手術の短期的な結果に関する記述は以下の通り。

・術後1ヶ月の生存率は90%です。
・術後1ヶ月の死亡率は10%です。


この結果「手術」を選んだ医師は、前者の記述では「84%」となり、後者の「50%」より圧倒的に多かった。

伝えている情報の内容自体は全く同じだったにも関わらず、“データの見せ方”が違うだけでこれだけ大きな差が生まれています。

(しかも実験の参加者はその辺の素人ではなく、専門的な知識を持った“医師”です)


また、こちらの「アジア病問題」も参考になります。

放置すれば死者数が600人に達する見込みの「アジア病」への対策として、以下の2つのプログラムが提案された。

◆問1:どちらのプログラムを選ぶか?

プログラムA:200人が助かる。[72%]
プログラムB:確率1/3で600人が助かるが、確率3/2で1人も助からない。[28%]

◆問2:どちらのプログラムを選ぶか?

プログラムa:400人が死ぬ。[22%]
プログラムb:確率1/3で一人も死なずに済むが、確率3/2で600人が死ぬ。[78%]

※[]内は実際にプログラムを選んだ人の割合。

問1も問2も論理的には言っている事は「同じ」ですが、それぞれのプログラムを選んだ人の割合は全く違います。


そしてその違いをもたらした原因は、問1では「助かる」という表現にしていたのを、問2では「死ぬ」という表現に変えただけです。


最初の医師の例で見た「生存率」「死亡率」も同様で、ただ単に言葉の使い方を変えただけで、「どの治療法を選ぶか」という重要な選択に影響を及ぼしています。

「確率」の表現


また何らかの“確率”を表現する際にも、

「この病気の死亡率は1%です」

と伝えるのと、

「この病気にかかると100人に1人が死亡します」

と伝えるのとでは、同じ情報でも受け取る側の印象は全く違ってくるという事が、行動経済学の実験でも実証されています。


以上から、何らかの数字を情報として伝える際には、

・自分にとって不利なデータは「プラスの言葉」で表現する
・相手にとって有利なデータは「マイナスの言葉」で表現する


と同時に、

・割合よりも実際の数値(○○人中××人など)の形で表現する

といったテクニックを活用する事で、そのデータに対する印象を効果的に強めていく事ができると考えられます。


例えば自社の場合は「顧客満足度80%」の方が「顧客不満足度20%」よりも好印象を与えますし(当たり前ですが)、同じデータでも競合他社について伝える際には、

「顧客の5人の内1人は不満を感じています」

と表現すれば、より“悪い印象(イメージ)”を強化する事ができるわけです。


もちろんこういったテクニックの乱用は決してお勧めしませんが、知っておく事で防御策にもなりますので、1つの知識として覚えておく事をお勧めします。


以上、参考になれば幸いです。


Kei

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